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事例26

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概要

上肢運動機能訓練評価装置は、2台のアームロボットで前腕部と上腕部を固定し、上肢運動の記録・再現が可能なロボットです。エンコーダとモータをcRIO-9039で計測・制御して実現しています。医療教育用ロボットアームは、患者の病的な症状を模倣することができる上肢ロボットです。モータに直結したプーリーを回転させてワイヤーの張力を制御し、固縮・痙縮・アテトーゼといった症状を教育現場で疑似体験することができます。また、評価することが難しいリハビリテーション時の患者へ加える外力を数値として表示・記録することができます。

[ 埼玉県立大学概要 ]
 埼玉県立大学・作業療法学科では、障害を持つ人々の心身の機能回復・維持・開発を図るため、人間の生活と環境におけるあらゆる作業活動を科学的に分析して治療・援助へ応用することのできる人材の育成をはかっています。そのため、急性期から慢性期における病院・施設での作業療法から地域リハビリテーションまで対応ができる知識・技術を体系的に学び、保健・医療・福祉サービスに関わる関連職種との連携を図りながら作業療法を円滑に実践できる能力を習得することを目指して専門的知識・技術の教授を行っています。

開発背景

図-1

上肢運動機能訓練評価装置は、国内外の大学や企業でさまざまな方式で考案されております。本大学では、作業療法の観点からセラピストの治療作業を装置に登録し、その動作を再現して治療と教育に使用できる装置を独自に開発することにしました。また、上肢のリハビリテーション教育現場で必要な病的な症状の疑似体験と学生の技術的習熟度を数値で評価することができるロボットアームについては、国内に存在しないため医療教育用ロボットアームを新規開発することにしました。

図-1 学生同士が患者と治療者役とならざるをえないリハビリテーション技術教育の課題

課題

[ 上肢運動機能訓練評価装置の課題 ]

  • 前腕部と上腕部を2台のアームロボットに固定した状態で自由に腕を動かせることができるメカニズムを製作し、その動作がロギングできること。
       (フリー状態でのロギング機能)
  • 上記①の装置でロギングした動作を再現することができること。(ロギングの再現機能)
  • 上記①の装置でロギングした動作をモニタ画面に表示できること。(モニタ表示機能)
  • 上肢動作を比較して評価・解析することができること。(評価・解析機能)

[ 医療教育用ロボットアームの課題 ]

  • 皮膚感覚、骨の形状を含めた上肢を再現すること。
  • 病的な症状の再現と外力の記録ができること。
  • 外力の記録を評価・解析することができること。

システム構成

[ 上肢運動機能訓練評価装置 ]
cRIO-9039シャーシにNI9474×2、NI9403、NI9381、NI9426×4を搭載して6軸力覚センサ2台と12個のエンコーダからデータを入力して上肢運動のロギングを実現しました。リアルタイム性が重要であるためFPGA+LabVIEW RTプログラムで収録したデータをノートPCへ転送してファイル保存しています。ロギングした上肢運動を再現する方法は、FPGA FIFOからモータドライバへパルス列を転送して実現しています。安全性を考慮して電圧でトルク制御可能なモータドライバを採用しました。このことにより一定以上の外力が腕にかからないような設計になっています。ノートPCの画面にはLabVIEWの3D Pictureを使用して上肢運動をモニタ表示させています。評価・解析は、グラフ表示したロギングデータをもとに面積比、可動域、タイミングで評価結果を算出しています。

図-2
図-2 NI製品を使用したシステム構成 (上肢運動機能訓練評価装置)

図-3 図-4
図-3 上肢運動機能訓練評価装置(アーム2台) 図-4 上肢運動機能訓練評価装置(上肢の装着)
図-5 図-6
図-5 再生画面 図-6 評価・解析画面

[ 医療教育用ロボットアーム ]
cRIO-9039シャーシにNI9474×2、NI9403、NI9381を搭載してモータドライバを制御します。特殊な素材で皮膚感覚を再現したロボットアームの中にワイヤーを入れて、モータに直結したプーリーを回転させて張力を制御しています。病的な症状は、トルク制御可能なモータドライバを採用して実現しています。外力によるトルク変化もcRIO-9039のUSB通信で入力して数値評価可能となっています。

図-7 図-8
図-7 医療教育用ロボットアーム 図-8 医療教育用ロボットアーム 記録画面

NI製品を使用したシステム構成は、上肢運動機能訓練評価装置とほぼ同じで6軸力覚センサの代わりにモータのトルク変化量をUSB通信でモータドライバから入力しています。

今回の開発においては、リアルタイム性、コンパクト性を考慮した上で、必要なI/Oの選択が可能な装置として、NIのCompact-RIOが最適なソリューションでした。特に有効だと思った機能は、FPGAからモータドライバへパルス列を転送するときに使用したDMA FIFOの機能です。採用したコントローラは、DMA FIFOの数に余裕があり6軸のモータを並列に動作させても全く問題ありませんでした。また、FIFOクリアを実行するとパルス列の転送がすぐに停止するのでモータが余分に動作することはなく、JOG動作の作成も簡単に実現できました。

結果

LabVIEWの3D Pictureは、今回の上肢運動をモニタ表示するのに有効でした。サンプルプログラムも用意されており、自由な素材が3D表示できますのでこの部分の開発工数は1/10以下になったと思います。
今回2台の装置(上肢運動機能訓練評価装置と医療教育用ロボットアーム)を同時に開発しました。上位制御の詳細は異なるのですが、LabVIEW RT+FPGAの部分と上位ノートPCの通信部分は共通化するこができ、開発工数を削減できています。医療教育用ロボットアームについては、商品化も考えており、低コストを実現するためにsbRIOを採用する場合、開発したプログラムの移植が容易であることも大きなメリットになります。

まとめ

上肢運動機能訓練評価装置と医療教育用ロボットアームは、装置としての運用テストがこれから必要となります。どちらも運用テストの段階で操作性の改善、アルゴリズムの改善などが予想されるがグラフィカル言語LabVIEWの利点を最大限に発揮して迅速に対処可能と期待できる。さらに医療教育用ロボットアームついては、教育現場で使用し、学生の学習効果の検証を積み重ね、ロボットアームを用いた教材を教育市場へ提供していきたいと考えています。

技術協力: 濱口 豊太(はまぐち とよひろ)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 教授

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